学生時代を含めて京都に17年も住んでいるというのに、ぼくは京都の名店とか全然知らない。
京都を訪ねてきた知人と会う。「どこかいいお店連れてってよ」 と言われる。硬直する。熟考した末、
「お寿司…」
「なんで京都まで来てお寿司よ」
「うどん…」
「なんで京都まで来てうどんよ」
「とんk」
「なんで京都まで来てとんかつよ」
「…ゆ、ゆどうふ…」
「湯豆腐か、悪くないけど、もうちょっとがっつり行きたいなー、ほかには?」
「 」
「わー、これこそ京都! っていうようなお店、ないの?」
「 」
「ねえ」
「 」
「もういい、湯豆腐食べよう」
というような局面を何度も経験してきた。京都らしい店とは一体なんなのだ。懐石か。おばんざいか。あるいは鴨川が見渡せるロケーションか。どういうところに連れて行けば喜んでもらえるのか、いつも煩悶する。
なのでここはいっそ開き直り、京都らしさがあるかどうかは完全においといて、お金のないぼくが通いつめたりつめなかったり、ともかくここは行く価値ありと独断で決めた京都のちょっといいお店のことを時々書いていこうと思う。
記念すべき第一回は、ぼくが愛してやまない回転寿司店、
ここは大好きな店。どれくらい好きかというと、別段お腹が空いてないときでも通りかかったらつい入ってしまって5、6皿食べてしまうくらいには好き。
もうだいぶ前になるが、この店から歩いて10秒のところにかっぱ寿司が出店してきたことがあって、なんちゅう喧嘩の売り方だと肝を冷やしたものの、あっという間に撤退してしまった。それくらい支持されている。
まず入店してすぐ分かることには従業員の数が多く、カスタマーサービスが行き届いている。注文したいけど誰もいない、ということが滅多にない。
小ぶりで上品なお寿司は全皿140円均一。大手に比べると若干、高め。でもネタは新鮮。回っていてもいなくても、頼めば目の前の職人さんがすぐ握ってくれる。ぼくの大好物である赤貝も、たいていいつもある。
それと、赤だし。ぼくはお寿司を食べに行くと必ず赤だしを注文する。ここのハマグリの赤だしは本当においしい。
ごくまれに、1階のカウンター席が混んでいると、2階へ案内されることがある。活気にあふれた1階とはまた違って2階はとても落ち着く空間になっている。ぼくはまだ一度しか上がったことはない。
そして、季節を問わず一年中、どの時間帯に行っても、外国人観光客が多い。おそらく海外の有名なガイドブックに掲載されているのだろう。
京都駅八条口と北区に支店がある。
おいしいお寿司に舌鼓を打ちながら、外国人観光客のほほえましい箸遣いを見て 「ああ、京都だな」 と満喫できることうけあいの店 (※個人差があります)。