人類がいなくなったヴィヴァルディの 「春」

中学一年のとき、音楽の授業でヴィヴァルディの四季から 「春」 の第一楽章を聴かされ、その感想を書きなさいと言われた。 ぼくがクラシック音楽に開眼するのは中学二年まで待たなければならず、そのときはまだ音楽鑑賞を積極的な趣味にすらしていない段階だ…

もう半分はグルダのせい

カルロス・クライバーと並ぶぼくのヒーロー、フリードリヒ・グルダ。 ぼくが三十五歳にもなってピアノを習いに行くなどという酔狂を始めた理由の半分はモーツァルトにあり、あとの半分はグルダにある。 でもグルダの音楽にちゃんと出会ったのは、没後ずいぶ…

ブリュッヘンを思い出す

たしか、あの日ぼくは風邪で体調を崩してひいひい言ってた。 熱もあった。 さいわい咳は出てなかったので、行こうと思った。 早くからチケットを買って、休暇にするつもりでいたのに、よりによってその日に会社が昇進試験の一次日程をねじこんできたもんだか…

【京都ちょっといい店 ①】 寿司のむさし三条本店

学生時代を含めて京都に17年も住んでいるというのに、ぼくは京都の名店とか全然知らない。 京都を訪ねてきた知人と会う。「どこかいいお店連れてってよ」 と言われる。硬直する。熟考した末、 「お寿司…」 「なんで京都まで来てお寿司よ」 「うどん…」 「な…

名曲名盤主義と、ぼくがぼくであるために

クラシック音楽愛好家は、楽曲と同等か、あるいはそれ以上に 「演奏家」 というものを重視する。 それがクラシック音楽鑑賞の最大の醍醐味であるのは間違いない。そうでなければ極論、ひとつの曲に対してひとつの演奏があればこと足りるということになって、…

一足飛びに時代を前進させた、英雄という名の英雄

あるバンドがメジャーデビューしたとする。ファーストアルバムはオーソドックスなロックのスタイルを踏襲しつつところどころ実験的な試みも盛り込み、荒削りながらもみずみずしい初期衝動をかき鳴らして見せた。 続くセカンドアルバムもファーストの音世界を…

モーツァルトの虹色のメロディ。

中学高校時代、まだクラシック音楽を聴き始めのころ、宇野功芳氏が折にふれ「いちばん好きな作曲家はモーツァルト」と書いているのを読んでは、「モーツァルトの何がそんなにいいんだよ」と思っていた。 なるほど小ト短調の交響曲などは十代の感受性にもそれ…

さいごは考古学者として砕け散った男

※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。 ※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。 大事なことなので2回言いました。 なんとはなしにインディ・ジョーンズシリーズ第1作である『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を見返したりしているんで…

宮本浩次は『恋人よ』を歌わない

突然だが、いちばん好きな歌手の、いちばん好きな一曲を挙げよ、と問われれば迷う人も多かろう。 エレファントカシマシにおいて、俺はその答えに窮しない。2位以下ベスト10曲を選ぶとすればその選定作業には大いに迷うことだろう。しかし最高位に座する一曲…