宇野功芳先生ありがとう、いつも楽しい評論を書いてくれて…

2016年が過ぎ去ろうとしている。ブーレーズ、アーノンクールなどクラシック音楽界にも大家の訃報があったが、ぼくにとってはやはり宇野功芳さんの逝去がいちばん衝撃だった。 ■チャーミングなおっさん みなさんは、ブルックナーのスコアにおいてメゾ・ピアノ…

やっぱり、ベトはすごかった

タイトル詐欺みたいなんですが・・・モーツァルトのピアノ協奏曲第20番二短調について書きます。 泣く子も黙るケッヘル466番である。 ははー。 この時代の協奏曲には、第一楽章の終わり近く、 「ここはソリストの好きなようにやったんさい」 と楽譜に何…

『オデッセイ』感想・マーズスランプ二人ぼっち(犬なんかよばなくてもくる)

映画『オデッセイ』観てきました。おもしろかったです。 注・・・以下、ネタバレあり。 未見の方はお戻りください。 ぼくがいちばん 「うおおおおお!」 ってなったのは、ある地点でワトニーが砂に埋もれた 「何か」 を掘り出そうとし、時を同じくして地球で…

日本に、朝比奈隆がいてよかった。

本邦のクラシック音楽ファンにとって朝比奈隆をどう評価するかは、けっこう避けては通れない問題で、それはかつてのカラヤンに対するそれと同じような、ある種の踏み絵となっている。 ぼくは90年代の、まさに朝比奈ブーム華やかなりし時期、何度か朝比奈と…

楽は三十三間堂に満ちて

フジ三太郎には月見ソバがよく似合うと言うが、 ブルックナーには仏像が似合う。 先日、京都に来た知人といっしょに、三十三間堂へ行きました。 三十三間堂なんて、ぼくも小学校の修学旅行以来だったんですけど、いや最高ですよここ。 観光名所としては清水…

猛暑日と田園交響曲 ~ 過剰な人工の楽園都市NO.6

毎日暑いですね。 せめて音楽だけでも避暑したいと思い、棚から取り出してかけたCDがベートーヴェンの 「田園」 だったりすると、もうだめだ。 あ、暑い。 そして過剰だ。 この交響曲は。 これまでに幾度もトライはしているのだが、ベートーヴェンの交響曲の…

ニュー・ホライズンズの冥王星最接近に寄せて

3時間ほど前の日本時間午後8時49分、探査機ニュー・ホライズンズが予定どおり冥王星の最接近に成功しました。 ニュー・ホライズンズは冥王星から1万2000キロというごく至近距離まで近づいたものの、通過時の速度は時速4万5千キロというとんでもないもので、…

いちばん行きたいとこは冥王星のプールサイド

グスターヴ・ホルストが組曲 「惑星」 を作曲したのは1916年のこと。 それから14年後の1930年、カルロス・クライバーや宇野功芳が生まれた年に、クライド・トンボ―が太陽系の第9惑星となる冥王星を発見。 新惑星発見の報を受けたホルストは第8曲 「冥王星」 …

宇野功芳「真夏の第九」

宇野功芳指揮の第九が聴ける日が来るなんて…。 宇野功芳/指揮 真夏の「第九」 2015年7月4日(土)いずみホール 宇野功芳(指揮) 丸山晃子(S)、八木寿子(A)、馬場清孝(T)、藤村匡人(Br) 大阪交響楽団、神戸市混声合唱団 ベートーヴェン:歌劇「フィ…

言葉なき歌、または宮崎駿は説明しない

☆ アカデミー賞受賞記念 ☆ 宮崎駿といえば活劇の人で、カーチェイスや飛行シーンにおいてその非凡なセンスが発揮されるのは万人の知るところであるがそれ以上に彼は何気ない、そう本当に何気ないカットに詩情をこめるのが上手いと思う。 『天空の城 ラピュタ…

【京都ちょっといい店 ②】 すしてつ先斗町店

京都ちょっといい店シリーズ第2弾は、またしても寿司。 お寿司好きなんです。 しかも京都だっつってんのに江戸前とかもうね。 「すしてつ 先斗町店」 (特に公式サイトはないようです) 三条大橋のたもとから先斗町へちょっと入ったところにあるこの 「すし…

人類がいなくなったヴィヴァルディの 「春」

中学一年のとき、音楽の授業でヴィヴァルディの四季から 「春」 の第一楽章を聴かされ、その感想を書きなさいと言われた。 ぼくがクラシック音楽に開眼するのは中学二年まで待たなければならず、そのときはまだ音楽鑑賞を積極的な趣味にすらしていない段階だ…

もう半分はグルダのせい

カルロス・クライバーと並ぶぼくのヒーロー、フリードリヒ・グルダ。 ぼくが三十五歳にもなってピアノを習いに行くなどという酔狂を始めた理由の半分はモーツァルトにあり、あとの半分はグルダにある。 でもグルダの音楽にちゃんと出会ったのは、没後ずいぶ…

ブリュッヘンを思い出す

たしか、あの日ぼくは風邪で体調を崩してひいひい言ってた。 熱もあった。 さいわい咳は出てなかったので、行こうと思った。 早くからチケットを買って、休暇にするつもりでいたのに、よりによってその日に会社が昇進試験の一次日程をねじこんできたもんだか…

【京都ちょっといい店 ①】 寿司のむさし三条本店

学生時代を含めて京都に17年も住んでいるというのに、ぼくは京都の名店とか全然知らない。 京都を訪ねてきた知人と会う。「どこかいいお店連れてってよ」 と言われる。硬直する。熟考した末、 「お寿司…」 「なんで京都まで来てお寿司よ」 「うどん…」 「な…

名曲名盤主義と、ぼくがぼくであるために

クラシック音楽愛好家は、楽曲と同等か、あるいはそれ以上に 「演奏家」 というものを重視する。 それがクラシック音楽鑑賞の最大の醍醐味であるのは間違いない。そうでなければ極論、ひとつの曲に対してひとつの演奏があればこと足りるということになって、…

一足飛びに時代を前進させた、英雄という名の英雄

あるバンドがメジャーデビューしたとする。ファーストアルバムはオーソドックスなロックのスタイルを踏襲しつつところどころ実験的な試みも盛り込み、荒削りながらもみずみずしい初期衝動をかき鳴らして見せた。 続くセカンドアルバムもファーストの音世界を…

モーツァルトの虹色のメロディ。

中学高校時代、まだクラシック音楽を聴き始めのころ、宇野功芳氏が折にふれ「いちばん好きな作曲家はモーツァルト」と書いているのを読んでは、「モーツァルトの何がそんなにいいんだよ」と思っていた。 なるほど小ト短調の交響曲などは十代の感受性にもそれ…

さいごは考古学者として砕け散った男

※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。 ※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。 大事なことなので2回言いました。 なんとはなしにインディ・ジョーンズシリーズ第1作である『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を見返したりしているんで…

宮本浩次は『恋人よ』を歌わない

突然だが、いちばん好きな歌手の、いちばん好きな一曲を挙げよ、と問われれば迷う人も多かろう。 エレファントカシマシにおいて、俺はその答えに窮しない。2位以下ベスト10曲を選ぶとすればその選定作業には大いに迷うことだろう。しかし最高位に座する一曲…