遠すぎた一億五千万キロ

過日。新幹線で東京へ向かう車中、あまりに良い天気だったため、スマホも見ずに飽きることなく空と景色をずっと眺めていたのだが、ふと、この速度であの太陽まで行ったらどのくらいの時間がかかるのだろうか、と思った。 計算は簡単で、地球から太陽までの距…

このアンダンテは寂しすぎるから……

モーツァルトのピアノソナタK.545。誰もが知ってる有名な第一楽章アレグロに続く、第二楽章アンダンテがとてもとても好きだ。 このアンダンテは、人生である。右手のメロディも一見明るく、左手はドソミソドソミソ。練習曲のような平明さに見えながら、モー…

結婚前夜、俺はずっとナンバーガールを聴いていた

信じられないかもしれないが、ナンバーガールが最初に解散したとき、俺はまだ25歳だった。 現在は45歳の夜更かしができないおっさんで、飲み会も17時集合の20時解散。「ねむらずに朝がきて ふらつきながら帰る」ことなど到底不可能なお年頃になってしまいま…

宮本浩次『縦横無尽』ツアーに行ってきた話

宮本浩次の歌はすばらしい。 椎名林檎をして「日本を代表する銘器」と言わしめる宮本浩次の声。強く太く、繊細で伸びやかで、なによりも、澄みわたった秋の空のような透明感をたたえるあの声。この透明感こそ、宮本浩次の歌を唯一無二たらしめる大きな要素だ…

今年買ってよかったもの

趣味は銭湯とピアノとインターネットで、ときどき宮地さんがテレビに出ると喜ぶ人生を送っており消費行動をあまりやらないのですが、それでも今年はわりに色々とものを買った気がする。 ・ニトリのLEDランタン 寝るときは真っ暗が好きなので、夜トイレに行く…

常に正しい音に行く

藤井聡太九段が竜王タイトル戦で勝利したときのAIによる悪手率分析が全4局のうち第2局〜第4局で驚異の0.0%だったらしい。無数に存在する「次の一手」の可能性の中から、常に最善手を見つけ出して打っているのだ。 「まるで神様に電話して聞いたとしか思えな…

けっきょく南極宮地さん

さる9月16日深夜、わたくしの推しである宮地眞理子さんがMBSラジオの生放送番組『あどりぶラヂオ』でパーソナリティを担当されました。100分間、CMなしで曲を挟みつつ宮地さんが喋りっぱなしという、ファンにとって空前の贅沢コンテンツでした。 あらためて…

台風とインディ・ジョーンズ

初めて金曜ロードショーで『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』を見たのはものすごい台風の夜だった。Wikipediaで調べてみると地上波初放送が1987(昭和62)年の10月16日で、翌17日未明にその年の台風19号が高知県へ上陸しており、ちょうど金曜ロードショー…

焼き鮭にメモリー

鮭の塩焼きをおかずに白米を食べるのが好きで、中学時代、弁当に焼き鮭が入っていると殊更にうれしかったものである。学校のヤカンで沸かした番茶がまたこれによく合った。鮭と白米をがばっと口の中に含み、すかさず熱い番茶をぐいっと流し込むと、鮭、白米…

第九ラストの問題点と歳末感

高校時代、第九のポケットスコアを購入し「フーム、あの音はこんなふうに書かれていたのか」と指揮者気どりで読みふけっていたぼくであるが第四楽章に一箇所、どうしても気になるというか腑に落ちない部分があった。 それは終結部の大詰め、合唱が「歓喜よ、…

『紙とダイヤモンド』円盤鑑賞記

脳みそが腐るほど悩んだ結果、東京行きを断念した3月の劇団Dotoo!公演『紙とダイヤモンド』のBlu-ray観賞記です。 作・演出:福田卓郎 2020年3月27日、下北沢駅前劇場での収録 ――――――――― ぼくは宮地眞理子ファンなので、どうしても宮地さんにフォーカスし…

ひゃくアップて言うな

ファミコンのスーパーマリオブラザーズが発売されて大ブームになったとき、3-1でノコノコを使ってマリオの残機を好きなだけ増やせる有名な技がたちまち話題になった。 当時、みなさんの周囲ではあの技のことを何と呼んでいただろうか。ファミマガの記事であ…

志村けんのこと

志村けんが死んで一週間、「思った以上にショックだ」という反応をたくさん目にした。ぼくも同じ気持ちだ。最近の動向を熱心に追っていたわけでもないのに、志村けんがいなくなってしまった喪失感が意外なほど大きい。 ぼく(1977年生まれ)の世代は、物心つ…

夢と魔法と現実と

待ちに待った中学の修学旅行、目的地は花の都・大東京。ぼくたち生徒のテンションの上がりっぷりやものすごく、行きのバス車内は狂乱の騒ぎであった。 初日の東京ドーム見学でいきなり現地ガイドさんから「こんなにまとまりのない学校は初めてですよ!」と標…

ミルクボーイの漫才風に宮地眞理子を語る

▽いきなりなんですけど ■うん ▽うちのオカンがね ■うんうん ▽好きなミステリーハンターがいるらしいんやけど ■そうなんや ▽その名前を忘れたらしくてね ■好きなミステリーハンターの名前忘れてもて ▽そやねん ■どうなってんねんそれ ▽んー ■でもオカンの知っ…

箸の持ち方を直したい

トイレをギリギリまで我慢する。天気予報が雨なのに傘を持とうとしない。真冬でも薄着。箸の持ち方がおかしい。昭和のバカ小学生かと思うが、ことし43になろうとしている自分のことなので、いよいよまずいと思えてきた。 とくに箸の持ち方は毎年正月に「今年…

「ターミネーター」と書かれたそのエロビデオ

アダルト動画サイトなどもちろん存在していなかった平成初めのころ、リビドーをもてあます男子中学生だった我々はエロ本にも成年コミックにも飽きたらず、とにかく「動くエロ」が見たくて見たくてしょうがなかった。男子中学生とはそういうものである。 アダ…

朝比奈隆が最後に遺したブラームス

今年は久しぶりに朝比奈隆のCDをあれこれ聴きなおした。その中で「いいなこれ」と思ったものが、ひとつは大阪フィルとスタジオ録音したブルックナーの交響曲第3番。もうひとつは最後のブラームス・ツィクルスとなった新日本フィルとのブラームス交響曲全集で…

久しぶりに見たホーム・アローンが面白かった話

年末になると『ホーム・アローン』が放送されて、去年も「平成も終わるというのにホーム・アローンて」と思いながら見てたら、子供のときとは違う視点ですごく面白かったんですよ。 自分が大人になったから登場人物の親たちの気持ちになって見られた……という…

鼻歌特定アプリがGoogleよりすごかった話

ずいぶん前から、ある歌のサビのメロディが不意に頭の中で流れてくることがあり、しかし誰の何という曲なのかがさっぱり分からないのであった。分かるのは ・女性が歌っている ・アレンジの感じからしてたぶん80年代 ということくらいで、あとはAメロBメロも…

『タケシとタツヤとマリコとライト』を観てきた話

注意! この記事は激しくネタバレを含みます。 作・福田卓郎、タケシとタツヤとマリコとライト『フランクロイドは電気羊の夢を見ない?』は、今後も再演される可能性が高いです。 まだ舞台をご覧になっていない方は、ここから先の記事をお読みにならないよう…

宇野功芳先生ありがとう、いつも楽しい評論を書いてくれて…

2016年が過ぎ去ろうとしている。ブーレーズ、アーノンクールなどクラシック音楽界にも大家の訃報があったが、ぼくにとってはやはり宇野功芳さんの逝去がいちばん衝撃だった。 ■チャーミングなおっさん みなさんは、ブルックナーのスコアにおいてメゾ・ピアノ…

やっぱり、ベトはすごかった

タイトル詐欺みたいなんですが・・・モーツァルトのピアノ協奏曲第20番二短調について書きます。 泣く子も黙るケッヘル466番である。 ははー。 この時代の協奏曲には、第一楽章の終わり近く、 「ここはソリストの好きなようにやったんさい」 と楽譜に何…

日本に、朝比奈隆がいてよかった。

本邦のクラシック音楽ファンにとって朝比奈隆をどう評価するかは、けっこう避けては通れない問題で、それはかつてのカラヤンに対するそれと同じような、ある種の踏み絵となっている。 ぼくは90年代の、まさに朝比奈ブーム華やかなりし時期、何度か朝比奈と…

楽は三十三間堂に満ちて

フジ三太郎には月見ソバがよく似合うと言うが、 ブルックナーには仏像が似合う。 先日、京都に来た知人といっしょに、三十三間堂へ行きました。 三十三間堂なんて、ぼくも小学校の修学旅行以来だったんですけど、いや最高ですよここ。 観光名所としては清水…

ニュー・ホライズンズの冥王星最接近に寄せて

3時間ほど前の日本時間午後8時49分、探査機ニュー・ホライズンズが予定どおり冥王星の最接近に成功しました。 ニュー・ホライズンズは冥王星から1万2000キロというごく至近距離まで近づいたものの、通過時の速度は時速4万5千キロというとんでもないもので、…

いちばん行きたいとこは冥王星のプールサイド

グスターヴ・ホルストが組曲 「惑星」 を作曲したのは1916年のこと。 それから14年後の1930年、カルロス・クライバーや宇野功芳が生まれた年に、クライド・トンボ―が太陽系の第9惑星となる冥王星を発見。 新惑星発見の報を受けたホルストは第8曲 「冥王星」 …

宇野功芳「真夏の第九」

宇野功芳指揮の第九が聴ける日が来るなんて…。 宇野功芳/指揮 真夏の「第九」 2015年7月4日(土)いずみホール 宇野功芳(指揮) 丸山晃子(S)、八木寿子(A)、馬場清孝(T)、藤村匡人(Br) 大阪交響楽団、神戸市混声合唱団 ベートーヴェン:歌劇「フィ…

言葉なき歌、または宮崎駿は説明しない

☆ アカデミー賞受賞記念 ☆ 宮崎駿といえば活劇の人で、カーチェイスや飛行シーンにおいてその非凡なセンスが発揮されるのは万人の知るところであるがそれ以上に彼は何気ない、そう本当に何気ないカットに詩情をこめるのが上手いと思う。 『天空の城 ラピュタ…

【京都ちょっといい店 ②】 すしてつ先斗町店

京都ちょっといい店シリーズ第2弾は、またしても寿司。 お寿司好きなんです。 しかも京都だっつってんのに江戸前とかもうね。 「すしてつ 先斗町店」 (特に公式サイトはないようです) 三条大橋のたもとから先斗町へちょっと入ったところにあるこの 「すし…